あがり症とは、人前で何かをする際に強い緊張を感じ、身体や心に症状が現れる状態のこと。
その症状には、心臓の鼓動、呼吸の困難、声の震え、手足の震え、吐き気、顔の赤み、多汗などがあります。
また、このような症状は、
- 人前で話す
- スピーチをする
- 他人との会話
- 上司との面談
- 電話対応
- 人前で文字を書く
- 初対面の人と食事をする
- パーティに参加する
などの場面で起こります。
あなたも、多くの人が前で話すことについて深刻な悩みを抱えていることでしょう。
たとえば、
- 人前で声が震えてしまい、文章が読めない
- 人前で手が震えて隠せない
- 人前で足が震えて立つのがつらい
- 人前で顔が赤くなったり汗をかいたりする
- 人前で急に頭が真っ白になってしまい挨拶やスピーチができなくなる
これらの経験は誰にでもあり得るものです。
しかし、こうした症状は不安や緊張から生じるものです。
そして、「自分だけがこんなにひどい症状を経験している」と感じて、一人で悩み続ける人がたくさんいます。
ですが、実は、日本人のほとんどの人が、人前では緊張しているんです。
アンケートでは、96%以上の人が人前で緊張しやすいと答えています。
これは日本だけでなく欧米でも同じで、スピーチ上手に見える人々も同様です。
とはいえ、そんな現実は気休めにしかなりませんよね、
だって、「誰もが緊張する」と知ったとことで、あなたのあがり症の症状がひどいという現実は変わりません。
だからこそ、多くの人がみんな「あがり症を克服したい!」と願うのです。
安心してください。
あがり症には原因と克服法があります。
今回はそれについてお伝えしていきます。
緊張は「自然な反応」
人前で話すときや初対面の人と会うとき、多くの人が「緊張して上手く話せない」「すぐにあがってしまう」と感じることでしょう。
しかし、これは誰にでも起こりうる自然な反応です。
というのも、心や体が緊張すると、自律神経のバランスが影響を受けるからです。
通常は交感神経と副交感神経がバランスよく働いていますが、不安を感じると交感神経が優位になります。
すると、
- 筋肉が緊張して震える
- 顔が赤くなる
- 心臓がドキドキ鼓動を打つ
- 汗をかいたりする
個人差はありますが、誰もが不安を感じることがありますし、緊張していないように見える人でも手に汗をかいたりするものです。
不安を感じるということは、生物として必要な感情だからです。
不安や恐怖による警戒心があるからこそ、人類は長く生き延びてこられたといわれています。
また、ほどよい緊張感が必要な場面もあります。
例えば、アスリートは適度な緊張感があったほうが良い結果につながるといわれます。
つまり、不安や緊張は必ずしも悪いものではありません。
「自分は人前ですぐに緊張してしまう」と悩んでいる人は、緊張していることをできるだけ隠そうとする安全のための行動をとりがちです。
すると、「顔が赤くなったら、他の人に笑われるのではないか」「汗だくで手や声が震えてしまったら、失礼な人だと周りを不快にさせてしまうのではないか」と考えて、自分にばかり注意が向いてしまい、その自意識が不安を強くしてしまいます。
さらに、不安が強くなればなるほど、赤面、発汗、震えなどの身体反応が高まり、悪循環が起こります。
その結果、頭が真っ白になったり、のどが詰まって話せなくなったりして、「自分は人前に出ると緊張してしまう」「人前に出るのが苦手」という考えが強くなってしまうのです。
他のことに注意を向けて緊張と上手に付き合う
緊張と上手に付き合う方法の一つは、緊張を隠そうとしないことです。
緊張することはごく普通の反応なので、「緊張してはいけない」「絶対に隠し通さなければならない」と思う必要はありません。
「緊張していることがばれてもいい、相手にわかってしまってもいい」と思えるようになると、不安は和らいでいきます。
「人前で話すのって緊張しますよね」などと、不安な気持ちを自分から相手に素直に伝えてみると、初々しさや真面目さを感じてもらえて、好印象を持ってもらえる場合もあります。
また、周りから自分がどう見えているのかという自意識が過剰になると、誰でも不安になり、緊張してしまうものです。
緊張しやすい人は特に、自分の体の反応やイメージに注意を向けすぎてしまいがち。
ですが、自分のことばかりを意識するのではなく、他のことに意識を向けることで、不安や緊張を和らげることができます。
【参考】あがり症のクリニック治療内容とは?
現状で『あがり症』は、心療内科や精神科などで診断され、社交不安障害や対人恐怖症として扱われることが多いようです。
また、薬物療法をするときは、不安を和らげる薬や動悸を鎮める薬、震えを抑える薬などを症状に合わせて処方されます。
ただし、この治療法は対症療法であり、病気の原因を取り除くものではありません。
現在の薬物療法では、根本的な原因を解消する薬は使用されていないのでです。
つまり、あがり症を克服するのは、自分自身で根本的な原因を探り、対処していくしかないということです。
あがり症になってしまう3つの原因
あがり症を克服するには、まず自分自身を理解することが必要です。
例えば、「いつ緊張しますか?」という質問をすると、大勢の人が「大勢の前で話すとき」に緊張すると答えます。
なぜでしょうか?
それは、ほとんどの人にとって「大勢の前で話す」ことが「非日常的な状況」だからです。
「克服」と言っていますが、克服よりもまず大勢の前での話し方スキルを学んでいないし、トレーニングも積んでいないから余計不安になる、という見方もできます。
例えば、スキージャンプに挑戦して非常に怖い経験をしたとしましょう。
ですが、ひとたび体験をしたら、その後は「スキージャンプを克服する!」と言うよりも、「スキージャンプの練習をする!」というふうに考えますよね。
それと同じことです。
つまり、「大勢の前で話す」ことがあなたの緊張する理由ならば、人前での話し方を学び、自信をつければ、人前での不安が減り、あがり症を克服することができます。
ちなみに、あなたは、100人、200人の前でスピーチしたことがありますか?
ない人がほとんどでしょう。
ですから、それだけの人前で話すことはそうそうありませんから、イザとなると緊張するのは当然のことです。
では、単に聞き手が少ないときは緊張しないかというと、そうではありませんよね。
聞き手が数名の場合でも、あがってしまうことがあります。
例えば、面接。
就職活動の際や昇進試験の面接で、緊張した経験をお持ちの方もたくさんいます。
昇進や就職の面接で何度も失敗してきたので、いい加減あがり症を克服したいという方も多いでしょう。
また、上司や取引先との会話でも、症状が出てしまうことはよくあります。
それでは、どのような状況や理由で私たちはあがってしまうのか、治すためにまずどんな場面で私たちはあがるのか、あがりやすい3つのシチュエーションをお伝えしていきます。
①過去のトラウマによる拘束
大勢の前での発表の場になかなか慣れない方は、過去の失敗や恥ずかしい経験から、人前に出ることを避けてしまうことが多くなります。
結果として人前に慣れる機会が得られないまま、あがり症が続いていることがよくあります。
これは、トラウマが改善の妨げになっている状態です。
あがり症で悩む人に、「今までどれくらい人前でスピーチしたことがありますか」と尋ねると、ほとんどないという答えが一般的です。
トラウマの経験が強く残っている上に、経験がない状態では、克服することが難しいのです。
また、無意識に「人前で恥をかきたくない」「人に弱みを見せたくない」といった気持ちが作用してしまうことも、改善が難しい人の特徴です。
② プレッシャーを感じて怯える
知人の前では緊張しないと思っている方も、実際はそうではありません。
実際には、職場の上司や同僚、部下や後輩の前で緊張する人も多くいます。
その理由は、仕事上の評価に直結することや、今後の関係に影響を与える可能性があるため、自分を恥ずかしい状況にさらしたくないという気持ちが働いているから。
なので、初対面の人との一時的な関わりの方が、実は気楽だったりもします。
また、学校の先生の中には、生徒や児童の前では緊張しないけれども、保護者の前や他の教員の前では急に緊張してしまう方もいます。
同じ内容を話す場合でも、評価されると感じる状況では、緊張が高まりやすくなるからです。
③ 準備や練習不足は不安を増幅する
あがり症を克服するためには、準備や練習が欠かせません。
しかし、あがり症で悩んでいる人ほど、準備や練習を怠る傾向があります。
その理由は2つあります。
まず1つ目は、準備や練習をすると本番を想像し、不安が増すためです。
そしてもう1つは、どのような準備や練習をすれば本番で緊張せずに話すことができるのかわからないためです。
どちらもよく理解できます。かつて私もそうでした。
しかし、練習を怠っても、本番でうまくいくことはありません。
克服するためのポイントは、不安を減らす準備をすること、本番に近い状況で練習をすることです。
本番と違う状況での練習は、残念ながら練習にはなりません。
それはまた、準備や練習が不十分であると言えます。
これらのシチュエーションであがってしまうことがよくあります。
あがり症が直らない人の3つの特徴
なかなかあがり症が直らない人には、次のような3つの特徴が多く見受けられます。
1.自己意識過剰
自己意識過剰な人は、他の人よりも自分のことを意識しすぎる傾向があります。
そして、周りからは全く緊張しているようには見えなくても、自分だけがひどく緊張していると感じることがあります。
これは、他人の目を気にしすぎるクセがあるから。
たとえば、自分の手が注目されていると感じると、手の震えなどの症状が出やすくなります。
また、自分が注目されていると感じると緊張しますが、逆に自分が他人を見ているときは緊張が和らぎます。
このクセを改善することができれば、あがり症が改善されるでしょう。
2.自分を良く見せる
あがり症の人は、人前では自分の良いところを見せたいと思うクセがあります。
誰もが他人に良い印象を与えたいと思うのは普通ですが、この意識が強すぎると余計に緊張してしまい、克服が難しくなります。
というのも、失敗や恥ずかしい思いをしたくないという気持ちがありすぎるからです。
3.逃げる
逃げるクセのある人は、あがり症に対して向き合うよりも、どうやって人前から逃れられるかを考える傾向があります。
逃げることで、ますます緊張が増していきます。
このクセがあると、改善が難しくなります。
では、どのように克服すれば良いのでしょうか。
あがり症を克服する5つの方法
日常生活や本番前に行える5つのあがり症克服法をご紹介します。
① リラックス
あがり症を克服するためのポイントは、体の状態から改善することです。
緊張すると体が硬くなります。
あがり症の人は特に体が硬い傾向にあります。
特に肩や胸、のどなどの上半身が緊張して、息が詰まって声が震えることがあります。
これを改善するために、日々ストレッチを行ってリラックスする習慣をつけることが有効です。
柔軟な体を作ることで、あがりを抑えることができます。
例えば、
- 首を左右に2回ずつ回す
- 肩を回して肩甲骨をほぐす
などの簡単なストレッチを行ってみてください。
ゆっくりと動かし、この動きをすれば身体がリラックスしていくという実感と意識を持つことが習慣化につながります。
ストレッチは本番前でも行えるので、ぜひ取り入れてみてください。
②. 腹式呼吸で安定した発声法を身につける
「声が震える」という悩みはあがり症の中でも特に多いものです。
安定した声を出すためには、まず深く強い息を吐けるようになることが重要です。
そのために有効なのが腹式呼吸です。
腹式呼吸は、息を吸うときに横隔膜を下げる意識でたくさんの空気を取り込む呼吸法です。
そして、声を出すときは横隔膜を上げて発声します。
大勢の前でスピーチするときには、この呼吸法を使って声を出します。
喉はリラックスした状態で力を入れずに、息が通るだけの状態を保ちます。
力を入れるのはお腹の部分だけです。
全身がリラックスした状態でお腹から声を出すことで、ラクに震えない声を出すことができます。
ですから、人前であがりを感じたら、まず深く息を吐きます。
その後、深く息を吸って呼吸を整えます。
このように、呼吸をコントロールすることで、声の震えを改善することができます。
③ コミュニケーションの練習
通常の会話では、話して、反応を待ち、というパターンが続きます。
ですが、人前で話すとき、通常は一方通行です。
相手からの反応があろうとなかろうと、話し続けなければなりません。
このような状況で話し続けるには、一定の積極性が必要です。
例えば、あなたは、初対面の人に自ら積極的に挨拶することができていますか?
というのも、1対1の関係で自ら積極的に話しかけられない場合、20人や30人の前で話し続けることは難しいからです。
人前で苦手意識がある場合、まずは1対1の関係で、自らコミュニケーションを取るトレーニングを日常生活で行いましょう。
これは良い行動パターンへの変化を促すための改善策です。
あがり症は広い意味での対人関係の問題です。
積極性が身につくと、人に対する恐れも徐々に克服できるでしょう。
自己の力で改善し、生活や行動の習慣を改善しましょう。
④ 目的や内容に集中する
あがるかどうかの境目は、「私はみんなに見られている」と思うか、「私がみんなを見ている」と思うかです。
前者の意識ではあがりますが、後者ではあがりません。
見ている意識を持つには、話す内容や目的に集中しましょう。
自分の気持ちを伝えることに集中すれば、自然と「見ている」意識が芽生えます。
どんな場面でも話す目的はあります。
その目的に集中すれば、あがりの心配が減ります。
あがらないようにと思っても逆効果です。
自分の気持ちを伝えることに集中することがあがり克服の鍵です。
⑤ 動画で自分を客観視してみる
本番前に自分の話す姿をスマートフォンなどで録画し、客観的にチェックするのがおすすめです。
あがり症克服のためには自己理解が重要です。
あなたは、自分の話す姿をチェックしたことはありますか?
「恥ずかしい」「自分の声が聞きたくない」と感じる方が多いです。
しかし、聞き手はあなたを見て聞いています。
「恥ずかしい」「自分の声が嫌い」と思っていると自信が持てません。
動画を見ることで、実際の緊張度が思っていたほどではないことに気づきます。
自己否定感が強い場合は他の人と一緒に動画を見てフィードバックをもらうのが効果的です。
同じ悩みを持つ人に相談するのも良いでしょう。
まとめ
あがり症は克服できます。
ですが、そのためには、自身の思考パターンや行動パターンを知り、修正することが必要です。
あがり症には程度の差がありますが、克服したいという強い意志を持つことが大切です。
原因を見極め、適切な対策を講じれば、誰でもあがり症を克服できます。
コメント